小説

会社が地球侵略にやってきた 「ARIEL」著者:笹本祐一〈朝日ソノラマ文庫〉

ある日突然、謎の宇宙人が地球侵略にやってきて、地球人は女性型巨大ロボットで立ち向かう!

とまあ、超ざっくり説明するとこんな感じです。字ヅラだけ見ると「いまどき、神をも恐れぬ設定(著者のあとがきより)」なわけですけど、この作品がこれまでの宇宙人vs巨大ロボットものと一線を画しているのは、やはりその「設定」にあります。

まず侵略にやってくるのが、銀河帝国から委託を受けた弱小侵略会社ゲドー社所属の大型宇宙戦艦オルクスです。要は銀河帝国の版図拡大という公共事業の下請けで侵略に来ているわけですね。

それを迎え撃つのが稀代のマッドサイエンティスト、岸田博士が所長を務める国立科学研究所ことSCEBAI(Science,Chemical,Electronics,Biochemical and Aerospace=スケベイ)が原子力空母10隻分の予算を投入して、極秘裏に建造(政府も知らなかった)した身長40mの女性型機動兵器ARIEL(All Round Intercept and Escort Lady=エリアル)です。

で、このARIELが獅子奮迅の活躍で宇宙人の機動兵器を撃退する!・・・なんてことはなく、科学技術に差がありすぎるため基本的には歯が立ちません。

それでも何とかなっているのは、銀河帝国は版図拡大が目的であるため、被侵略側の星系を原住民を含めた現地の環境を可能な限り無傷で手に入れ、侵略完了後も円滑な統治を行いたいということ。ゲドー社は帝国から設定された侵略期間を目いっぱい使って報奨金を稼ぐことが目的なので、ちまちまと牛歩戦術的な侵略を取っているためです。

双方ともに殲滅が目的ではないため、侵略ものにありがちな悲壮感が全くありません。

物語もちまちまと侵略をしている間に、超絶超人がやってきたり、同業他社の横やりを受けたり、SCEBAIに自衛隊が攻めてきたり、修学旅行に行ったり、タイムトラベルに巻き込まれたり、宇宙怪獣が現れたりと盛りだくさんです。

これに魅力的で個性的な両陣営のキャラクターたちが絡み合いながら、終始テンポよく物語が流れていきます。

52話構成で、本編20巻+番外編2巻が発売されましたが、現在は絶版です。

後に文庫2巻分を合本し、各巻に書下ろしで前日談と後日談を加えたものが11巻発売されましたが、これも残念ながら絶版になっているようです。

まだライトノベルというジャンルが存在していなかった時代の小説ですが、今読んでも十分楽しめる作品だと思います。

一応、中古での出品はまだまだあるみたいですので、興味のある方は探してみてください。

ではでは

-小説

© 2024 空の本棚