ここのところ「この冬一番の寒気」ということで各地では記録的な大雪となっているところが多いようです。
地上に雪をもたらす寒気の目安としては、500hpa(高度約5700m=18000ft)上層天気図において、‐30℃の当温度線の範囲の地域、850hpa(高度約1500m=5000ft)の上層天気図において‐6℃の範囲の地域になります。
このあたりの数字はNHKの天気予報なんかではよく出てくる数字なので、普通の人でも何となく聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。
今回の寒気は‐6℃の寒気が、日本列島をほぼすっぽりと覆ってしまっているため、名古屋とかでも雪が降ったようです。
で、本題。
こういう強い寒気が入っているときには、飛行場が晴れていても周辺では時折特徴的な天気現象が見られることがあります。
その一つが「VIRGA=尾流雲」です。
これはどんなものかというと、雲の下からカーテンのように垂れ下がっているように見える雲のことです。
↓こんな風に
雲とは名前が付いていますけれども、実際は雨や雪などの降水現象であり、大体は周辺が乾燥しているため途中で蒸発してしまい、地表に到達する前に消えてしまうことが多いです。
地表に届かないことが多い降水現象なので、降水域としては大して強くないのですが、付近を飛行するには注意が必要です。
まずは空中視程です。
雲ではないため、雲中飛行とはならず飛行中のVMC(有視界気象状態=計器に頼らず姿勢や進路の把握等ができる状態)の気象条件を満たすこともありますが、空中視程は確実に悪くなります。
「このぐらいだったら大丈夫」なんて思って飛行しているうちに、みるみる視程が悪化してしまい、いつの間にか雲に変わり、飛行中のVMCを満たさなくなっていたということになりがちです。
こうなってしまうと完全に航空法違反になってしまいます。
もっとも技能審査中でもない限り、取り締まる人がいるわけではないので捕まるようなことはないですが、自分の命が非常に危険な状態にさらされているという危機感は持っておく必要があります。
そして、次は風の影響です。
一般的に、積乱雲の下ではダウンバーストと呼ばれる強烈な下降気流が生じることがありますが、VIRGAの中でも降水が蒸発した際に周囲の空気が冷却され、下降気流や、時にダウンバーストを生じることがあるようです。
私はまだ幸いなことにダウンバーストのような強力な下降流には遭遇したことはありませんが、訓練空域からの帰投中などにやむなく付近を飛行しなければならないときはかなり注意を払います。
特に冬場の雲は気温が低いため、雷が発生する条件を満たす雲長高度も低くなるので特に注意が必要です。
ということで、まとめますと「VIRGAの側には近付くな」ということですな。
着氷の危険性も高まるため、小型機なんかだとキャブレター・アイシングやインテークダクトが塞がったりして、最悪エンジン停止に陥る可能性も出てきますしね。
これから冬本番。今日のような日も増えてくると思いますが、出発前の確認をしっかり行って安全運航に努めていきましょう!
ではでは