「冬季運航で注意することは?」技能審査や日々の訓練前のブリーフィングで質問されたとき、あなたはなんて答えますか?
おそらく9割以上の人が真っ先に答えるのが着氷=アイシングではないでしょうか。
それだけ飛行機の運航、特に冬季における運航において一般的なものであり、厄介なものでもあります。
どのくらい厄介かというと、飛行特性が変わったり燃費が悪くなる程度で済めばまだマシな方で、最悪の場合はエンジン停止や墜落といった事態になりかねません。
一般的に着氷が発生する条件として言われているのは、過冷却水滴(0℃以下に冷却された水滴)が空気中に存在したり、機体表面の温度が0℃以下などがあります。
特に注意を要する強い着氷が発生する温度帯としては0℃~-10℃と言われています。
着氷の種類としては、
①雨氷=クリアアイス:透明で板状の氷。冬の水たまりなんかにできるやつみたいなの。
②樹氷=ライムアイス:乳白色で粒状の氷。スキー場の樹木にくっついてるやつみたいなの。
③霜=フロスト:まんま霜。冬の早朝、葉っぱの上とかについてるやつみたいなの。
があります。
その中で特に厄介なものは、雨氷=クリアアイスです。
クリアアイスは大きな水滴が機体表面に当たり、氷の層を形成していきます。また、成長が早くしかも硬いので、一度成長してしまうと除去が難しいという特性も持っています。
大体は、翼の前縁付近やプロペラの前縁に発生し、翼に発生した場合は翼の形状が変わるため燃費が悪化したり、飛行特性が変化したりします。プロペラで発生すると、プロペラの重量バランスが崩れるため大きな振動を発生させたりもします。
また、ピトー管にアイシングが発生すると、正確な速度や高度が分からなくなるので非常に危険です。
さらに、除去できたとしても、除去した氷塊が大きくなることもあり、剥がれた氷塊が機体表面を損傷させたり、エンジンに吸い込まれるとファンブレードを損傷させることもあります。
着氷が発生しやすい条件としては、圧倒的に雲中が多いですが、空気中の湿度が高い時などは雲の外を飛行していても発生することがあるので注意が必要です。
私も過去に雲上飛行中、突然、警報灯の点灯もなしにひどい機体振動が始まったことがあり、機外を確認するとプロペラスピナー(プロペラ先端のコーン状のカバー)がフジツボのように真っ白に着氷を起こしていたことがありました。
慌ててプロペラヒーターを入れて事なきを得ましたが、あれは今思い出してもぞっとするような揺れ方でした。
では、着氷を避けるにはどうすればいいか?
まずは出発前の確認で、着氷が予想される場所や高度帯を把握しておくことです。これは850hpaや700hpaでその日の湿域を確認しておくとともに、SKEW-Tなどでフリージングレベル(気温が0℃以下となる高度帯)を把握しておくことで、事前にその空域に対して注意を持っておくことができます。
次はやはり雲中飛行や降水域の飛行を避けることです。もちろんVFRで飛行している場合、雲中飛行をしてしまうと航空法違反にもなってしまうので色々アウトです。
どうしても降水域や着氷域を飛行しなければならないときは、兆候によく注意をしましょう。着氷の兆候としては、翼の前縁が白っぽくなってきたり、ワイパーに霜が付いたりシャーベット状の氷が発生し始めることで分かります。
そして、着氷に遭遇してしまったら、防氷・除氷装置を装備している航空機であれば速やかにそれらの機器を作動させてください。もし、それらを装備していない航空機であれば、速やかにその空域から離脱しましょう。 また、気温がプラスとなる高度まで降下することも有効ですが、最低安全高度や山岳などの地表とのクリアランス確保も忘れないようにしてください。
ということで、今回は着氷=アイシングについて書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?冬季運航には色々と厄介なものがありますが、どれも対策ははっきりしているものが多いです。
これからの冬本番に備えて冬季運航の手順について再確認をし、安全運航に努めていきましょう!
ではでは