日々の話

自分で作る資料の落とし穴

 

「教官、先週の宿題のことなんですが・・・」

と、先週一緒に飛んだ訓練生のN君が言い難そうな雰囲気を纏って私のところにやってきました。

N君は先週のフライトのプリブリーフィング(訓練前の打ち合わせのようなもの)で、いくつか質問をしたのですが答えられないものがあったのでそれを宿題としていました。

そのうちの1つが「警急業務(そのうち説明すると思います)のうち不確実の段階とはどんな状態?」というものだったのですが、彼が提出したレポートには、私が期待していた答えのうち2つまでしか書いてなかったので、調べなおして再提出するよう求めたのです。

そして、冒頭の言葉に続いて次のようにN君は続けました。

「自分の持っているAIM(※)では、やっぱりこの2つしか見つかりませんでした」

(※)AIM-JAeronautical Information Manual-Japanのコト。1冊に航空機の運航から航空法規の概略、気象、安全対策等まで網羅するたいへん便利な本。パイロットにとっては必携ともいえるもの。

「いやいや、そんなことないやろ~」と私のAIMをパラパラと開いてみると・・・

「ありゃ、マジでないやん」

私の記憶では5つの状態があったはずなのですが、実際にはN君の言うとおり2つしかありませんでした。

原因は実に簡単でした。

私は試験が近付いてきた訓練生に模擬口述試験を行うことがあるのですが、その際に使用する自分でまとめた資料の内容がが古くなっていたことに気付いていなかったのです。

私はN君に余計な時間を使わせてしまったことを謝罪し、いつ変更になったのかを調べてみることにしました。

すると2019年の前期版で変更されており、実際にはもっと前に変更になっていたことが分かりました。

新しいAIM-Jが発行されると、3ページ目に目立つようにピンクの紙でその号での変更事項が記載されています。

私も毎回チェックしていたのですが、単に「見て」いただけだったのでしょう。

自分で作った資料というものは作ったことに満足してしまい、得てして時間が経ってから中身の正確性をあらためて検証するということを怠りがちです。

どんなによくできた資料であっても古くなってしまえば意味はありません。

定期的に中身を精査し、常に最新の状態を保っておくことが自分の身を守ることにもつながってきます。

安全運航のため、常に最新の情報をチェックし、意識して見ることを心掛けたいものです。

ではでは

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