航空業界、特に技能証明取得のための教育現場やそこで学んでいる訓練生にとって、航法計算盤=フライトコンピュータは必須アイテムなのですが、個人で購入しようとすると結構な値段がします。
同じサイズの盤面を持つAN-1は税込みで2万円くらい。アルミでできたコンパクトタイプのE6-Bは、安いものでも5000円~といったところです。
しかし、今回紹介するASA製のPaper Flight Computerだと約半額の2400円くらいで購入できます。送料を入れても3000円ちょっと。
はっきり言って計算盤としては激安です。
「でも紙でしょ?」というのはおそらく誰もが抱く疑問ではないかと思います。Amazonで見ても評価が☆4.5あるけど、たった2件でしかもコメントなし。
確かに安いけど、ちょっと手を出し難い感じです。
と、いうわけで実際に購入して試してみることにしました。
で、さっそく結論ですが、十分実用に耐えうると思います。
紙製ということでまず気になるのは強度ですが、そこそこの厚みを持った紙を使っているので、作りとしては思ったよりしっかりしています。ただし、見た感じでは、特にコーティングとかはされていないので耐水性は期待しない方がよいでしょう。
大きさとしては、AN-1やTANC-3と同じくらいだと思います。比較用として先日購入したコンパクトタイプのE6-Bと並べてみました。
左が紙製E6-B、右がコンパクトタイプのE6-Bです。盤面の大きさの違いが分かると思います。
そして盤面です。
計算尺面
大きくてコントラストもはっきりしているので非常に見やすいです。
回転も適度なテンションとスムーズさが両立しており問題ありません。ガタもないので精度も問題ないですが、湿度や経年で回転面が反ってこないかがやや心配です。
測風面
さすがにここだけはプラ(PETかな?)製です。
盤面は鉛筆で記入できるようにマット処理がされています。回転軸もしっかりセンタリングが取れているためブレもなく、回転も良好です。
スライダもスムーズに上下するわりには、遊びが最小限になっているため、こちらもブレなく測風の精度もきちんと出ると思います。
ただし、スライダが低速用しかないので、巡航速度が200ktを超えるような航空機を使用している場合には測風面は使用できません。
そして、これは他の計算盤でもそうですが、測風面は記入と消去を繰り返しているうちに表面が劣化して、汚れが落ちなくなったり鉛筆の乗りが悪くなることがあるので、予防的にメンディングテープを張っておいた方がいいかもしれませんね。
ではまとめです。
- 強度的としては紙製のわりにはしっかりしている。通常使用では問題ないが、機内への持ち込み等での曲がりには注意が必要
- 工作精度は良好であり、十分実用に耐えうる
- 計算尺面、測風面ともに非常に見やすく精度も良い
- 高速機には不向き
- 水濡れ、湿気厳禁
以上のような感じです。
教員やスクールの備品として長期間にわたり使用するには、強度的にやや不向きではありますが、訓練期間中や技能審査での一時的使用など、期間が限定された環境下で使用するのであれば、非常にコスパの良い計算盤だと思います。
また、現在の航空機は、小型機であっても統合ディスプレイを採用したものも多く、ライセンス取得以降で計算盤を使用する頻度は稀ではないかと思います。そう考えたとき、訓練期間中のために2~3万もする計算盤を購入するよりは、コイツを買って浮いたお金で他の参考資料を買ったりする方がよいのではとも思います。
ただ、一応付け加えておくと、当然AN-1やTANC-3の方が耐久性も使い勝手も良いので、金銭的に余裕があるのであればそちらの方が良いと考えます。
尚、最近は計算機タイプのフライトコンピュータやスマホアプリでのE6-Bもありますが、慣れるとアナログの計算盤の方が圧倒的に計算速度は速いうえに簡単ですよ。
ではでは