空の話

冬季運航の注意点 ~山岳波の話~

航空機の冬季運航において注意すべき点は?

一つは「着氷」これはもう鉄板、そして一つの雄はというと「山岳波」だと思います。

ただ着氷と違って、強風が吹くときは春だろうが夏だろうが発生するときは発生するので一概には言えませんけれど、西高東低の気圧配置が頻繁に発生し、強風の頻度が増す冬場では特に注意が必要です。

では、山岳波はどういう時にどんなところに発生するのか?

一般的には、山頂高度付近に逆転層などの安定層があり、山脈などに直角に近い風向で、かつ風速が強い時に山脈などの風下側に発生します。

メカニズムとしては、

①山脈などにより強制上昇させられた空気が断熱膨張により温度が下がるため下降

②下降した空気は、今度は断熱圧縮により温度が上がるために再度上昇

③上記①と②を繰り返しながら風下側に伝搬

その過程において、空気が上昇から下降に転じる付近や、それより下の高度から地表付近にかけて山岳波=タービュランスが発生します。

山岳波の発生域を視覚的に見分ける方法としては、レンズ雲やロール雲が発生していると注意することと書籍等にはよく書かれていますが、これらの雲が特に冬場において発生していることは稀です。

↓レンズ雲

なぜなら、冬場は空気が乾燥していることが多く、そもそも雲を発生させるだけの水蒸気が空気に含まれていないのです。

ではどうやって山岳波の発生を予測するのかというと、上層風の風速でアタリを付けています。

概ねの目安については、飛行経路付近に存在する山脈等の山頂付近における高度において40kt以上の風が吹いていると注意します。

特に寒冷前線の通過後などは注意が必要です。

上記のような条件を満たしているときは、できるだけ山頂高度よりも2000ft以上、航空機の性能が許せば山頂高度よりも5000ft以上の高度を巡航高度に設定するのが安全です。

また、山岳波は山脈等からかなり離れた地域でも発生していることがあるので、風の強い日は山岳地から離れているからといって油断しないようにしましょう。

付け加えると、富士山などの孤峰においては、より強烈な乱気流が発生することがあります。私も以前、山頂風速が30kt以下の春先に富士山の風下側を通過した際、「ドカン」と叩き落されるような乱気流に遭遇したことがありますので、風速が弱いからといって安易に富士山の風下側には近付かないようにしましょう。

もっとも富士山の東側には自衛隊の射撃場が設定されているので、そうそう飛行できる機会は少ないでしょうけどね。

ということで、今回は山岳波に関するお話をしてみました。

山岳波は目に見えないので、非常に厄介な存在です。しかもこれからの時期には遭遇する確率が高くなってきますので、引き続き気象状況をよく確認しつつ安全運航に努めていきましょう。

ではでは

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