さて、前回は航空無線通信士と航空特殊無線技士、取るならどっち?ということで、取れるのであれば断然「航空無線通信士」という話をしました。
それを受けての今回は、航空無線通信士の試験対策編です。
まあ「試験対策」といっても大したことは書きません。
なぜなら、この試験においての一番の鬼門は英語だからです。
とにかく普段から英語の勉強をしておいてください。
それ以外の科目と実技は、機械的記憶と練習で何とかなりますが、英語だけは積み重ねが必要だからです。
以下にその理由について科目ごとに説明していきます。
無線工学
この科目の試験対策のコツは理解しようとしないことです。
電流だダイオードだ変調器だとわけのわからないものがたくさん出てきますが、出てくるものはパターンが決まっています。
いくつかの鉄板公式と回路図を機械的に記憶して、過去問をひたすら解きましょう。それで充分です。
レーダーやILS、VOR/DMEに関することは直接の運用に関わってくるので、ここだけは理解しておくことをお勧めしますが、その他の無線工学に関する知識は今後必要になる場面はほぼありません。
真面目な人ほど、ちゃんと理解しようとして教科書を買ったりしがちですが、工業高校を出ているわけでもない素人が簡単に理解するのはほぼ不可能です。
はっきり言って時間の無駄ですので、理解しようとする時間で公式や回路図を覚えて過去問をひたすら解きましょう。
無線法規
この科目も無線工学と同様に機械的記憶で十分です。ひたすら過去問を解いて覚えましょう。
ただし、遭難通信や緊急通報に関する事項や通報内容、受信したときの対処などは、航空機を運航するうえで必要にな知識ですのでしっかり覚えておきましょう。
技能証明の実地試験でも、まず間違いなく遭難/緊急通報の模擬発出を行うことになりますから。
電気通信術
とりあえず英語は飛ばして、先に電気通信術を解説します。
電気通信術は受話と送話があります。
いずれにおいても、前提としてフォネティックコードを覚えておく必要があります。
フォネティックコードとは記号や数字を正確に伝達するために考案された、アルファベットと数字の読み方の決まり事みたいなものです。
Aなら「アルファ」、Bなら「ブラボー」といった具合です。戦争物の映画なんかで「アルファ小隊は突入、ブラボー小隊は援護を!」なんて言っているあれです。
AからZ、0から9まで決められています。パイロットをやっている限り、一生使い続けるものなので全部を正しく覚えましょう。
「フォネティックコード」でググれば簡単に見つかります。
続いて試験内容、まずは受話から。
フォネティックコードでアルファベット(数字はありません)が5字ずつ読み上げられるので、これを解答用紙に書きとります。
明瞭な発音で流れてきますが、2分/100字とそれなりのスピードで流れるので、集中して書きとっていきましょう。
なお、よく聞き取れなかったときに適当なアルファベットを記入するのは絶対にやめましょう。
理由は脱字の減点が1点なのに対して、誤字の減点は3点だからです。
聞き取れなかった個所は空白にして次に進みましょう。
次に送話です。
送話は試験官との面接方式で、紙に書かれたフォネティックコードを2分/100字のペースで読み上げていきます。
事前にしっかり練習しておけば、読み上げ自体は問題ないと思います。
が、この試験には品位という謎評価項目があり、ここを外すと最大で15点の減点がありますので注意が必要です。
この品位による減点を防ぐためには、開始時に「始めます、本文」と宣言して読み始めることと、終了時に「終わり」と明確に宣言することです。そして、間違えた際に「訂正します」と宣言し、間違えた個所の2~3文字前から読み直すということです。
ここをしっかりと押さえておけば問題ないと思います。
英語
さあ、そして最後に英語です。
英語は筆記と会話(リスニング)に分かれています。
まずは筆記から
英語の筆記試験は「長文読解」「短文読解」「和文英訳(穴埋め)」の3つのパートがあります。
おそらくですが、英語のレベルとしてはあまり高くないと思います。当時のTOEICの点数が、たぶん450~500付近だったと思うので、まあそのくらいの英語力で大丈夫ってところです。
ただし、内容については長文と和文英訳は航空・宇宙関係の時事ネタが多いので、日常では使わない「そっち方面」の単語がちょいちょい出てくるので注意が必要です。
短文読解は「航空通信に関する国際文書」の趣旨に沿って出題されています。
何だかややこしそうな感じがしますが、航空通信における運用方法が書かれた英文があって、その内容について問うものです。
カッタイ英文が書かれていますが、文法的にはそう難解ではありません。
筆記について言えるのは、航空・宇宙関係や航空管制の知識があるとかなり楽だということです。
一般的なTOEICに出るような単語よりも、そっち方面の単語力を身に付けるようにしましょう。
最後は、鬼門の会話です。
出題方法は、最初に設問文が3回読み上げられます。初めの2回はゆっくりと、3回目は通常の(というかやや速い)速度で読み上げられます。
これも英語としてのレベルは高くありません。
が、実はここの問題は英語能力を確かめるものではなく、航空機の運航に関する知識を確認するものなのです。(と、私は思っています)
なぜなら、ここだけは基本的な運航に関する知識を持っていないと、正答を選ぶことができないのです。
さらに、このパートでは満点封じのためなのか、普段ちょっとお目に掛からないような単語が出ることがあります。
私が受験したときは「次のうち化石として見られるものは何か?」という問いでした。
まず化石を意味する「fossil」を知っていないと正答を選べません。私はたまたまFOSSILというメーカーの時計を持っていて、意味を調べていたので知っていましたが、普通の人は知らんでしょ。
ちなみに選択肢は「ammonite」と「coelacanth」とあともう一つは忘れましたが、海生生物の何かでした。
最初のammoniteは「アンモナイト」です。まあこれは気付ければちゃんと読める。
でも次のcoelacanthは?
はい、これ「シーラカンス」です。タイトル回収。
こんな単語、一生のうちに何人が出会うんだ。
何見て「ヨシ!」って言ったのか知らんけど、航空通で出す必要が果たしてあるのか?
そして恐ろしいことに、会話で15点未満(正答3問未満)だと筆記が満点でも不合格になるというね。
とにかく、英語に関しては出てくる単語や内容がかなり特殊なので、パイロットとして必要な知識を身に付けながら語彙力を上げていく必要があります。
まとめ
ちゅーこってまとめです。
まず無線工学と法規はひたすら過去問&暗記をして理解しようとしないこと。
電気通信術はフォネティックコードを全て覚えて、声を出しながら練習してください。
聞き取りは、練習用のアプリやyoutubeとかがあるらしいので、そちらで聞き取り&書き取りをセットで練習です。
そして英語
文法力は高卒程度で十分なので、過去問をこなしながら航空・宇宙と航空管制に関する用語を身に付けていってください。
リスニングも過去問で傾向(航空機の運航関係に限る)を把握して、パイロットとしての基礎的知識(管制用語と運用要領)を深めながら対策してください。
変な単語が出てきたときは...、あきらめてサイコロ振ってください(笑)
以上、健闘を祈ります!
ではでは
余談ですが、シーラカンスと同じく生きた化石のオウムガイは、英語でnautilus(ノーチラス)だそうです。